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東京地方裁判所 昭和40年(ワ)3702号 判決

第三七〇二号事件原告 社会神祉法人 楽石社

第三七〇二号事件被告 社会福祉法人 日本ベル福祉協会

第八四八七号事件原告 国

第八四八七号事件被告 社会神祉法人 楽石社

主文

1(昭和四〇年(ワ)第八、四八七号事件について)

一  被告社会福祉法人楽石社は原告国に対し、金九、〇三〇万五、八五八円およびこれに対する昭和四〇年九月一六日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。

二  この判決は仮に執行することができる。

2(昭和四〇年(ワ)第三、七〇二号事件について)

一  被告社会福祉法人日本ベル福祉協会は原告社会福祉法人楽石社に対し、原告社会福祉法人楽石社から金四、〇五〇万円の支払を受けるのと引換えに、

(1)  別紙物件目録(二)記載の建物のうち、地下一階、地上一階および二階の部分を収去して、同目録(一)記載の土地を明渡し、かつ、

(2)  右土地についてなされた別紙登記目録(一)および(二)記載の各登記の抹消登記手続をせよ。

二  原告社会福祉法人楽石社のその余の請求を棄却する。

3(両事件について)

訴訟費用については、国と楽石社との間で生じたものはすべて楽石社の負担とし、楽石社と日本ベル福祉協会との間で生じたものはすべて日本ベル福祉協会の負担とする。

事実

〔昭和四〇年(ワ)第八、四八七号事件〕

第一当事者の申立

一  原告国

1  主文第1項の一と同旨

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決ならびに仮執行の宣言。

二  被告社会福祉法人楽石社

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決。

第二当事者の主張

(請求の原因)

一  原告は、昭和三五年一月二〇日被告に対し次の約定により、別紙物件目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という)を代金九八〇万七、八九二円で売渡した(以下、これを「第一売買契約」という)。

(1)  (用途指定)被告は、直接本件土地を昭和三六年一〇月三一日から七ケ年引き続いて社会福祉事業施設の用途に供すること。

(2)  (譲渡禁止)右期間内は、その所有権を第三者に移転しないこと。

(3)  (特別違約金)

被告が右約旨に反し本件土地を第三者に移転した場合は、原告は、右第一売買契約を解除することができるが、原告が解除することを適当でないと認めるときは、原告は、被告に対し特別違約金を請求できる。右特別違約金の算定方法は、次のとおりとする。すなわち、(イ)売買契約締結時、(ロ)契約違反時、(ハ)転売時、(ニ)特別違約金の徴収決定時、の各時点における、本件土地の時価に相当する金額のうち最も高い金額から、本件売買代金額を控除した残額と金五五四万三、五五〇円(売払時の時価一、八四七万八、五〇〇円の三割に相当する金額)との合計額とする。

二(1)  ところが被告は、昭和三八年一月一八日本件土地のうち八七八・六七平方メートル(二六五坪八合)を、次いで同年六月二四日本件土地の残り全部を社会福祉法人日本ベル福祉協会(以下「ベル協会」という)に売却して、昭和三八年七月一一日その所有権移転登記手続を了した。

(2)  そしてベル協会は、本件土地上に別紙物件目録(二)記載の建物(以下「本件建物」という)を建築し、ベル協会等がこれを所有して右土地を使用している。

三(1)  そこで原告は、前記一の約定に基づき本件第一売買契約を解除することは不適当と考え、昭和三九年四月、被告に対し次の(2) に述べる計算に従つて特別違約金を請求することを決定し、昭和四〇年八月二六日頃被告到達の書面をもつて、同年九月一五日までに特別違約金九、〇三〇万五、八五八円を支払うよう催告した。

(2)  特別違約金の算定は、次の方法によつた。すなわち

イ 金八、四七六万二、三〇八円

前記一(3) の算定方法の記載の(イ)ないし(ニ)の時価のうち、最も高額であつた(二)特別違約金の徴収決定時(昭和三九年四月)の価格である金九、四五七万〇、二〇〇円から本件売買代金額金九八〇万七、八九二円を控除した残額。

ロ 金五五四万三、五五〇円

右イ、ロの合計額金九、〇三〇万五、八五八円。

四  よつて原告は、被告に対し右特別違約金およびこれに対する前記三、(1) の催告において定めた期限の翌日である昭和四〇年九月一六日から完済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(被告の答弁)

一  請求原因事実に対する答弁

請求原因一、二の各事実は、いずれも認める。

同三(1) の事実のうち、原告から被告に対し原告主張の催告がなされたことは認める。その他の事実は争う。

二  被告の主張

(一) 原告は被告からベル協会への本件土地の譲渡につき承認を与えた。すなわち

(1)  ベル協会理事長山下春江は、楽石社から本件土地を譲り受けるに先立ち、昭和三八年一月一六日頃書面をもつて原告関東財務局長牧野誠一に対し右土地の指定用途の変更の申請をなし、同局長よりその内諾を得た。

(2)  さらにその頃、右山下春江は、原告大蔵省管財局長白石正雄に対し「原被告間の本件第一売買契約を解除して、新たに原告からベル協会へ本件土地を払下げてほしい。」と要請したところ、同局長は、「そのような方法では予算措置が必要となり、面倒だから、むしろベル協会が直接被告から譲り受けた方がよい。」と答え、楽石社とベル協会との間の譲渡代金につき、積極的にベル協会の相談に応じた。同局長は、国有財産の処分権限を有している(国有財産法第九条参照)だけでなく、すでに払下げられた土地の転用許可についても、その権限があるものといえるから、右発言は、ベル協会への譲渡につき原告を代表して、これを承認したものとみるべきである。

(二) 原告は、次のような事情からして被告からベル協会への本件土地の譲渡について黙示の承認をしたものである。

すなわち

(1)  原告は、前記(一)(1) 、(2) のとおりベル協会との折衝を通じて、本件土地が被告からベル協会へ譲渡されることを知りながら、その後昭和四〇年三月までの約二年間、被告に対し何ら異議ないし注意を述べなかつた。

(2)  さらにこの間、関東財務局長吉村真一は、昭和三九年八月二一日、当時すでに本件土地につき所有名義人となつていたベル協会のため、本件土地につきさきに被告の売買代金支払を担保するため設定されていた抵当権設定登記を抹消することを東京法務局渋谷出張所に対して嘱託した。

(3)  ベル協会は、本件土地上に分譲住宅を含む本件建物を建設するにつき厚生省の了承を得、昭和三九年三月建築許可を得て工事に着工し、昭和四〇年三月右工事を完了した。その間原告は、右工事のためベル協会に三、〇〇〇万円の補助金を交付してこれを支援し、同年三月まではベル協会に対してはもちろん、被告に対しても何ら責問の意思表示をしなかつた。

(三) かりに原告の承認がないとしても、被告がベル協会に対してなした本件土地の譲渡は、次の理由により原被告間の第一売買契約の趣旨に実質的には違反しない。すなわち

(1)  被告は、昭和三八年一月頃、本件土地上に約一、〇〇〇万円を投じ、身体障害者福祉施設の建設に着手したが、その後資金不足に悩まされていたところ、ベル協会から被告に対し「ベル協会の福祉施設建設用地として本件土地を譲渡してほしい。資金の不足がちな被告がやるより資金の潤沢なベル協会が福祉施設を作つた方が本件土地の使用目的にも合致する。」との懇請を受けた。

(2)  そこで被告は、ベル協会との間で、「(イ)本件土地上には必ず福祉施設を建設する。(ロ)その一部は被告に使用させる。(ハ)本件土地の譲渡に先だちベル協会は、責任をもつて国の承認を受ける。」との合意をしたうえで、本件土地をベル協会へ売渡した。

(3)  ところで、第一売買契約における前記違約条項(請求原因一参照)の趣旨とするところは、本件土地が社会福祉事業施設以外の用途に供されることを禁止しようとするにある。

(4)  そうだとすれば、被告と同じ社会福祉事業を目的とする公益法人であるベル協会が、前記(1) のような経緯により本件土地を取得することは、何ら主体の変更とはいえず、ベル協会は、違約条項にいわめる「第三者」に当らないものというべきである。

(四) 右(一)ないし(三)の主張が認められないとしても、原告の本件特別違約金請求は、次の事情を考慮しないものであつて、著しく信義則に反し権利の濫用として無効である。

すなわち

(1)  本件土地は、もと角田堺の所有であつたが、堺には相続人がなかつたため昭和三一年一二月二六日国庫に帰属した。被告の理事伊沢はるは、堺と従姉妹の関係にあり、原告に対し右土地の払下を申請したが、原告は個人に対して払下を認めず、結局法人である被告に払下げたものである。もし、当時現行民法第九五八条の三の規定があれば、右伊沢はるは、特別縁故者として本件土地の分与を受けていたはずである。

(2)  被告は、前記のとおり本件土地の活用を図るために、これをベル協会に譲渡した。一方、原告は、右譲渡の事実を事前に知りながらあえてこれを禁止せず、自ら行政監督上の注意を怠つておきながら、昭和四〇年三月に至り被告に対し自らの恣意的判断にもとづいて突然、本件のようなかこくな特別違約金の請求をしてきたものである。

(3)  本件土地を譲り受けたベル協会は、本件土地の性格を充分承知しておりながら、被告との約束に反し本件土地上に豪華マンシヨンを建築したもので、用途違反は実質的にはベル協会がなしたものであるから、原告は、違約金の請求よりもむしろ、被告との間の第一売買契約を解除して、ベル協会に対し本件土地の返還を求めれば、目的は十分に達することができるはずである。

(被告の主張に対する原告の答弁)

主張(一)の承認を与えたという点は否認する。(一)の(1) の事実は否認する。(一)の(2) の事実のうち、白石局長が被告主張のころ、山下春江と面会したことは認めるが、その他の事実は否認する。

主張(二)の黙示の承認があつたとの点は否認する。(二)の(1) の事実のうち、被告主張のとおりの折衝がなされ、原告が昭和四〇年三月まで被告に対し異議を述べなかつたことは認めるが、原告が譲渡の事実を知つたのは事後においてであり、事柄の性質上内外への影響を考慮してその間に事情を調査していたものである。(二)の(2) の事実は認めるが、これをもつて黙示の承認があつたものとすることはできない。(二)の(3) の事実は争う。すなわち、厚生省は、当初ベル協会に対し新宿区戸山町に地上三階地下一階の会館を建設することにつき補助金を交付する旨決定したが、その後昭和三九年三月ベル協会の申請に基いて本件土地上に三階建の会館を建設することにつき三、〇〇〇万円の補助金を交付する旨変更決定した。厚生省としては、ベル協会による本件土地の取得については所管外のことであるから、被告による転売まで承認したことにはならない。

主張(三)、(1) の事実は否認する。(三)の(2) の事実のうち、本件土地をベル協会に譲渡したことは認めるがその他の事実は否認する。(三)の(3) および(4) の各主張は、いずれも争う。

主張(四)の信義則違反ないし権利乱用の点は争う。(四)の(1) および(2) の事実のうち、被告が本件土地をベル協会へ譲渡したこと、原告が被告に対し昭和四〇年三月特別違約金の支払を請求したことは認める。その他の事実は否認する。

(四)の(3) については、ベル協会が本件土地上に本件建物を建築したことは認めるが、その他は争う。

〔昭和四〇年(ワ)第三、七〇二号〕

第一当事者の申立

一  原告楽石社

1  被告は、原告に対し別紙物件目録(二)記載の建物を収去して、同目録(一)記載の土地を明渡せ。

2  被告は、原告に対し別紙物件目録(一)記載の土地につきなされた別紙登記目録(一)、(二)記載の各登記の抹消登記手続をせよ。

との判決ならびに第一項につき仮執行の宣言。

二  被告ベル協会

原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。

との判決。

第二当事者の主張

(請求の原因)

一(1)  原告は、前記第八、四八七号事件における「被告の主張」(三)、(1) 記載の経緯から、被告との間で、原告を売主、被告を買主として別紙物件目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という)について、次のとおり売買契約(以下「第二売買契約」という)をした。

イ (契約日)昭和三八年一月一八日

(目的物)本件土地のうち八七八・六七平方メートル(二六五坪八合)

(代金)金三、一八九万六、〇〇〇円

ロ (契約日)同年六月二四日

(目的物)本件土地のうち残り全部

(代金)二、〇〇〇万円

(2)  原告代理人伊沢八弥は、昭和三七年一二月下旬頃、被告代表者山下春江との間で、本件土地の取引に関し次のとおりの合意をなし、これが右第二売買契約の内容となつていた。すなわち

イ 本件土地は、原告が国からその用途および処分について前記第八、四八七号事件の請求原因(一)記載のとおりの制限のもとに払下げをうけたもので、これに違反した場合は特別違約金を支払うよう定められているので、被告は自己の責任において第二売買契約につき国の承認を取りつけること。

ロ したがつて本件第二売買契約は、被告が国の承認をとりつけることを停止条件として効力を生ずるものであり、所有権は国が承認した時点において被告に移転するものとする。

ハ もし、第二売買契約につき国の承認が得られない場合には、原被告は右売買契約を解除することができる。

二  ところが国は、原告に対し昭和四〇年八月二六日頃到達の書面をもつて、第二売買契約が、国と原告との間の第一売買契約に違反することを理由として、特別違約金九、〇三〇万五、八五八円の支払を求めてきた。

三  右事実からすれば、国は原被告間の第二売買契約につき承認を与えない意思を表明したものとみるべきである。そうだとすれば

(1)  第二売買契約は、前記一、(2) 、ロ約定の条件の不成就が確定したから、無効である。

(2)  かりに停止条件不成就の主張が認められないとしても、第二売買契約における原告代理人伊沢八弥の売渡の意思表示は、錯誤により無効である。すなわち、被告代表者山下春江は参議院の有力議員であり、かつて厚生省政務次官を勤めたことのある者で、同人は大蔵省や厚生省に顔がきく旨強調し、その政治的力をもつてすれば、本件売買につき国の承認を容易に受けられると言明したので、原告もその言を信用し、国の承認を確実に受けられるものと誤信し、その誤信にもとづいて右伊沢が売渡の意思表示をしたものである。したがつて伊沢の右売渡の意思表示は、その要素に錯誤があり、無効である。

(3)  かりに以上の主張が認められないとしても、第二売買契約については国の承認が得られなかつたのであるから、前記一、(2) 、ハの約定により、原告は、被告に対し昭和四〇年四月二九日到達の書面をもつて、第二売買契約を解除する旨の意思表示をした。

四  ところで(1) 本件土地については、被告のため別紙登記目録(一)、(二)記載の各登記がなされており、(2) 被告は、昭和四〇年三月本件土地上に別紙物件目録(二)記載の本件建物を建築し、右土地を占有している。

五  よつて原告は、被告に対し本件土地の所有権に基づき、または契約解除を理由として、本件建物を収去して本件土地を明渡すことおよび本件土地につき被告のためなされた別紙登記目録(一)、(二)記載の各登記の抹消登記手続をなすことを求める。

(被告の答弁および抗弁)

一  請求原因事実に対する答弁

請求原因一の(1) の事実は認める。ただし、イの売買代金は、金二、二五九万三、〇〇〇円である。同(2) の事実のうち原告主張のころ、原告代理人伊沢八弥が被告代表者山下春江と話し合いをもつたことは認めるが、その他の事実はすべて否認する。

請求原因二の事実は、知らない。

請求原因三の(1) の点は争う。同三の(2) の事実のうち、被告代表者山下春江が参議院議員であり、かつて厚生政務次官を勤めたことは認めるが、その他の事実は否認する。同三の(3) の事実のうち、原告がその主張のように契約解除の意思表示をしたことは認めるが、その他の事実は否認する。

請求原因四の(1) の事実は認める。同四の(2) の事実のうち、被告が本件建物のうち地下一階、地上一、二階の建物を所有し、本件土地を占有していることは認めるが、本件建物の三階ないし六階は第三者の所有である。

二  抗弁

(1)  かりに原告主張の要素の錯誤が認められるとしても、第二売買契約についての国の承認のとりつけは、原告自らも予め国の担当官等に事務的に話をつけるべき性質のものであるにも拘らず、原告は、被告代表者の政治力のみに頼つて、容易に国の許可が得られるものと誤信し、右売買契約を締結したものであるから、右の錯誤については原告に重大な過失があるものというべきである。

(2)  かりに原告の請求が理由があるとしても、被告の本件土地について所有権移転登記の抹消登記手続をなすべき義務および明渡義務は、原告の次のイ、ロに述べる金員の返還義務と同時履行の関係にあるから、原告が右義務を履行するまで被告は、本件土地の抹消登記および明渡を拒むものである。

イ 金四、二五九万三、〇〇〇円

被告が原告に支払つた売買代金。

ロ 金三五三万一、三五一円

右は、原告が国から本件土地を買い受けた売買代金の未払残額およびその延滞利息の合計額で、被告が原告名義で国へ支払つたものである。

(抗弁に対する原告の答弁)

抗弁(1) の事実は否認する。

抗弁(2) の主張は争う。たゞし、被告が三五三万一、三五一円の立替払いをしたことは認める。

〔証拠関係〕〈省略〉

理由

第一昭和四〇年(ワ)第八、四八七号事件について

一  当事者間に争いのない事実

原告国は、昭和三五年一月二〇日、被告社会福祉法人楽石社(以下楽石社という)に対し請求原因一記載の約定により、別紙物件目録(一)記載の土地(以下これを本件土地という)を代金九八〇万七、八九二円で売渡したこと、そして楽石社が社会福祉法人日本ベル福祉協会(以下ベル協会という。)に対し、昭和三八年一月一八日右土地のうち八七八・六七平方メートル(二六五坪八合)を、次いで同年六月二四日残り全部の土地を売渡して、同年七月一一日ベル協会のため所有権移転登記手続を了し、ベル協会が本件土地上に別紙物件目録(二)記載の建物(以下これを本件建物という)を建築し、右土地を使用していることは当事者間に争いがない。

二  事件の経過

成立に争いない甲第一、二号証、同第三号証の一ないし一〇、乙第三号証、同第一二号証、丙第五号証、同第六号証の一、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第四号証、同第六、七号証、同第八、九号証の各一、二、丙第四、五号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第一号証、証人伊沢八弥の証言によつて真正に成立したものと認められる乙第四、五号証、同第一三号証の一、二、証人伊沢八弥の証言およびベル協会代表者山下春江本人尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる乙第六ないし第九号証、ベル協会代表者山下春江本人尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる丙第三号証、証人白石正雄、同林原正三、同関良多、同若林賢一、同大山多吉、同小山宅次、同伊沢八弥、同鈴木寅次の各証言およびベル協会代表者山下春江本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。

(一)  本件土地の旧所有者とその移転の経過

(1)  本件土地は、もと角田堺の所有であつたところ、同人は心臓麻痺のため遺言する暇もなく昭和二九年二月四日死亡し、同人には相続人がなかつたので、右土地は、昭和三一年一二月二六日国庫に帰属することとなつた。

ところで、被告の前身である財団法人楽石社は、明治三四年創立以来五〇有余年にわたり吃音矯正の事業に尽力してきたが、昭和三一年暮れの出火で施設のほとんど全部を焼失してしまつた。しかし、関係者により事業再建が進められ、昭和三四年四月には社会福祉法人として再出発し、右角田堺の姪に当る伊沢はるおよびその夫伊沢勝麿らが楽石社の中心となつて、本件土地上に聾唖者ならびに音声もしくは言語機能の障害者の救済設備を含めた施設を作り、あわせて故人堺の霊を慰めたいと考え、国に対し本件土地を払下げてほしい旨を再三にわたり陳情し、その際、新設校舎並に寄宿舎設計図を添付するなどその熱意を示したため、国もその事業計画に賛同し、原告国(契約担当官関東財務局長稲田耕作)と被告楽石社(理事長伊沢勝麿)との間で、国を売主、楽石社を買主として昭和三五年一月二〇日本件土地につき請求原因一記載のとおりの約定のもとに第一売買契約が締結され、国有財産売買契約書(甲第二号証)が作成された。なお右売買代金は、当時の時価一、八四七万八、五〇〇円を国有財産特別措置法第三条により減額して九八〇万七、八九二円と定めたもので、右代金から即納金一九六万七、八九二円を控除した金額について、年六分五厘の利息を付し昭和三六年二月五日を第一回として昭和四〇年まで毎年二月五日(ただし昭和四〇年度分は一月一九日)に分割して支払う約定であつた。

(2)  ところが楽石社は、本件土地を取得してはみたものの、右割賦金の支払はできず、まして予定していた身体障害者を対象とする収容所兼職業指導施設建築のための資金も十分でなく、その調達に手間どり、そのため契約で定められていた「昭和三六年一〇月三一日までに本件土地を社会福祉事業の用途に供しなければならない」という用途指定の始期より大幅に遅れたが、やつと昭和三七年一一月頃に至り、それまで放置してあつた本件土地の整地にとりかかつた。

(3)  一方、ベル協会は、聾唖者の機能障害の治療、回復を目的として昭和三六年九月に設立された社会福祉法人である。これに対し国から聾唖者福祉会館施設整備の補助金として昭和三六年度の予算で三、〇〇〇万円が出ることが決まり、その頃からベル協会は、厚生省の協力を得て会館建設用地の物色をはじめていたが、なかなか適当な土地が見つからず、右予算は三七年度、三八年度と順次繰り越されて、その活用をみるに至らなかつた。

(4)  昭和三七年一一月頃、当時ベル協会の理事長をしていた参議院議員山下春江のところへ、選挙の際同女史を応援したと称する渡会恍が、本件土地の青写真をもち込んだ(この青写真は、楽石社理事長伊沢勝麿の長男である伊沢八弥が、その先輩であり、かつ楽石社の相談役であつた北西伊作に、資金難のため本件土地の処置について困つている旨告げて、同人に預けておいたものである。)これがきつかけとなり山下理事長は、直ちにベル協会の理事藤本敏夫と共に本件土地の見分に行つたところ、右土地には一面に草がおい茂り、一部整地をしかけたままの状態であつたが、環境がよいので是非、これをベル協会で入手したいと考え、前記渡会恍に本件土地の買い受け方を委任した。

(5)  そこで右渡会は、同月下旬頃、山下春江の秘書という肩書をつけた名刺をさし出して楽石社の理事である前記伊沢八弥に会い、同人に対し「楽石社は資金がなくて施設ができないと聞いているが、ベル協会は、土地がなくて今物色中であるが、是非本件土地をベル協会に使わせてほしい。」旨申し入れたところ、右伊沢は、国との約束で本件土地には用途指定があるので申し出に応じられない旨を返事した。これに対し渡会は、ベル協会は楽石社と同種の仕事をやるのだし、山下理事長は国会議員だから別に悪いことに使用するのではない、用途指定があるならその書類をみせてほしい旨重ねて頼み込んだ。これに対し伊沢は、「楽石社が土地を、ベル協会が資金を、それぞれ提供しあつて施設を作り、共同事業でやつたらどうだろうか」という大まかな考えを伝えるとともに、右会談の二日後に、国と楽石社との間で取りかわした契約書の写を渡会に手渡した。

(6)  渡会から事情の説明を受けた山下理事長は、早速伊沢八弥に会い、同人に対し本件土地の譲渡方を懇請した。これに対し伊沢は、一応本件土地について用途指定、譲渡制限のあることを告げて一応難色を示したが、右山下から、「社会福祉の仕事は国家的事業であり、国の特別の援助もあろう。自分は国会議員として大蔵省、厚生省につながりがあるし、場合によつたら総理大臣にも会つて話しをつけたい。」などと言われたので、伊沢は、国に対しては未だ売買代金も完納していないし、資金難にあえぐ楽石社がいつまでも本件土地をもつていることは心苦しい次第で、もしこの土地を生かしてもらえるなら、それに越したことはない旨の返事をし、当日はそれでわかれた。

その後数日して、再度山下から伊沢八弥に連絡があり、役所の方は全部自分の方で責任をもつから至急本件土地を譲つてほしい旨の申し出があつたので、伊沢八弥は、理事長である父勝麿と相談のうえ、譲つてもよい旨の返事をした。

(7)  楽石社とベル協会は、右(5) 、(6) の交渉を基礎にして、楽石社側では伊沢八弥が、ベル協会側では渡会が、それぞれ契約担当者となつて交渉をもち、請求原因二、(1) 記載のとおり本件土地につき翌昭和三八年一月一八日と同年六月二四日の二度にわたつて売買契約を締結し、これに伴う数通の文書(乙第六および第七号証の各売買契約書、同第八号証の覚書、同第九号証の協定書など)を取り交わした。右文書の取り交わしの中で終始一貫していたことは、ベル協会が本件土地上に聾唖者のための福祉施設を建設するという点であつたが、楽石社、ベル協会間の同年一月一八日の本件土地の一部売買にあたつては、国と法律関係に立つているのは楽石社であつたので、同社を表面に出す形をとり、両者間で「ベル協会が本件土地を使用できるようにするため楽石社は、大蔵省に対し用途指定変更の申請手続をとらねばならないが、ベル協会も右手続がすみやかに処理されるよう政治的に協力する」旨が約された。さらにベル協会は、同年六月二四日本件土地のうち残地全部を楽石社から買い受けた際、大蔵省に対する関係で買受人たる楽石社の地位を承継することを前提にし、「楽石社に対し迷惑となるような事態を生ぜしめないよう保証する」(乙第八号証、第三条参照)として、全面的に責任を負うことを約した。

(二)  山下理事長と国との交渉の経過など

(1)  ベル協会の山下理事長は、前記(一)、(6) 記載の経緯により楽石社から本件土地を譲り受ける基本的な話し合いをつけたのち、昭和三八年一月中旬頃、大蔵省管財局長白石正雄を局長室に訪ね、「楽石社は、国から払下げを受けた本件土地をそのままに放置している。ベル協会も、社会福祉事業をやつているが、施設を作るのに適当な場所がない。それで本件土地をベル協会に使わせてもらいたいが、何とかならないか。」と相談した。これに対し同局長は、「管財局ではこの売払の件を知つている者がいないので、国と楽石社との間の契約を調べてみなければ、どのような方法があるかよくわからない。ただ、すでに所有権は楽石社に移転しているので、関東財務局の方で買戻して、それをベル協会に払下げるということができれば、その手続をふむのが普通の方法だろう。しかし買戻となると予算措置が必要となり、時期的にもまずく、それには相当の時間がかかるのではないか。いずれにしても、これについてどのような方法があるかは、本件土地を処理した関東財務局によく研究するようにいつておくから、そちらに行つて話してほしい。」旨を答え、そのすぐ後で関東財務局管財部長に電話で山下理事長の用件を伝え、検討してみてほしい旨を頼んだ。

(2)  白石管財局長からの右の電話依頼を受けた関東財務局管財部長は、直ちに当時管財第三課長であつた関良多に対し、山下理事長の前記依頼の趣旨を伝えるとともに事情を調査するよう指示をした。そして、同年一月中旬頃、関課長が、また同じ頃、同局管財部次長林原正三が山下理事長に会つた。その際の右山下の申し出は、楽石社が払下を受けた本件土地の半分を、ベル協会の社会福祉会館建設のため使用させてほしい、というのが骨子であり、その趣旨を述べた同月一六日付要望書(乙第一二号証)もその頃、関東財務局長宛に提出されたが、ベル協会が同月一八日楽石社から本件土地のうち二六五坪八合を買い受けていたことは、楽石社との話し合いで、国との交渉の際には伏せてあつた。そして、関課長が、右山下と会つた頃、伊沢八弥を招致して楽石社の意向を確かめたのであるが、その際右伊沢の話では、譲渡ということではなく、ベル協会に貸すことを考えているという程度の説明にとどまつていた。

(3)  関東財務局としては、ベル協会が本件土地の半分を使用する方法として、用途指定の変更でいくのか、転売を認めるという方法でいくのか、いずれにしても特殊のケースであつたので、同月二一日頃、当時、大蔵省の管財局(本省)との間で毎週月曜日午後から事務処理上の問題点を出して検討する定例の連絡会議に持ち出した。右会議には、いつもは本省からは管財局長も出席し、関東財務局からは、牧野局長はほとんど出席せず、管財部長、次長が出席し、自由に意見の交換が行われていたが、本件の場合にも、国と楽石社との間の第一売買契約の条項をそのままにして、国がベル協会の本件土地の使用を承認するということに問題があつたので、国が買戻して新たにベル協会に売払う、用途指定を解除して転売を認める、契約を解除して本件土地を国が取り上げるなどさまざまの案が出され議論された。しかし、同年二月上旬頃開かれた連絡会議では、楽石社とベル協会は、いずれも使用目的が同じであり、国が損害を蒙るということも考えられないので、ベル協会への転売を認め、そのかわり時価の二分の一だけ楽石社から支払いを受け、ベル協会から用途指定について一札をとるという方向で検討しようということで議論が煮つまり、林原管財部次長は、関課長に対し、早急に本件土地の時価の評価を出してみるようにと指示した。

(4)  右(3) のとおり関東財務局においてベル協会の本件土地の一部使用について検討が進められる間、ベル協会は、楽石社をして前記(一)、(7) 認定のとおりの昭和三八年二月一日付協定書(乙第九号証)を添えて関東財務局長宛に、払下財産の用途変更についての同年二月二六日付要望書(乙一三号証の一)を提出させていたが、楽石社がベル協会から売買代金一、五〇〇万円を受領しながら、その約旨に反し、国に対する納付金を完納しなかつたので、ベル協会の山下理事長は、回年二月下旬頃、林原管財部次長を訪ね、「ベル協会は、楽石社が国に納付する金を楽石社に渡しておいたところ、楽石社はこれを他に全部使つてしまつた。そこでベル協会としては、本件土地のうち残り全部を使わせてもらわねば困る。」旨を申し入れた。これに対し右林原は、契約内容も手続も済まないうちにそのようなことをしてもらつては困る、と返事をしたが、その後の連絡会議での検討では、ベル協会の全部使用もやむを得ない、との線が出て、前記(3) の方針通り本件土地の評価を急ぐことになつた。

(5)  関東財務局では、本件土地の時価について国有財産鑑定課にその評価方を頼んでいたが、当時オリンピツク関係の国有財産の移動が多く、評価事務は繁忙をきわめており、また鑑定の手数料の予算もそちらの方に取られていたような状態で、評価は進まず、昭和三九年六月になつてやつと同年五月現在の時価の評価が出た。

(6)  一方、ベル協会は、昭和三八年六月二四日楽石社から本件土地のうち先に買い受けた土地の残り全部を買いとり、楽石社が、当時桑井建設株式会社に請負わせて右土地上に建築中の木造厚型スレート葺二階建(建坪七四・四坪、二階六七・二坪)の建物を取毀した。そしてベル協会は、本件土地に福祉会館建設のための資金を捻出するため、当初東京都新宿区戸山町を建築予定地として地上三階地下一階(延坪八〇〇坪)の福祉施設を建てる計画を変更し、本件土地上に地上二階地下一階(総面積三〇四六・八九平方メートル)の施設を作ることにし、新たに地上三ないし六階に分譲住宅を建築する案を作り、国の補助の対象となるべき右施設につき同年一二月一〇日付で厚生大臣に対し昭和三八年度(昭和三六年度からの事業繰越分)聾唖者福祉会館施設整備費補助金に係る事業内容変更の承認を求め、更に東京都に対し本件建物の建築許可申請をなし、昭和三九年三月二五日付で先の事業内容変更の申請に対する厚生大臣の承認を得、その頃建築許可を受け、同年四月頃右建築工事をはじめた。

(7)  この事実を知つた産経新聞の記者が、その頃関東財務局管財部第三課を訪ね、ベル協会が楽石社から本件土地の転売を受け、右土地上にマンシヨンを建てるということだが、国の方で承認しているのか、との質問があつたことがきつかけとなり、第三課で早速事実の調査をしたところ、本件土地はすでに楽石社からベル協会に転売され、昭和三八年七月一一日にベル協会のため所有権移転登記がなされていること、右転売の代金がベル協会から楽石社に支払われていること、建物は、丸紅飯田株式会社が建築するもので、そのうち地下一階、地上一、二階はベル協会の、地上三ないし六階は丸紅飯田株式会社の、各所有となつたこと、そして丸紅飯田はベル協会から地上権の設定を受けて、三階以上の部分をいわゆるマンシヨンとして分譲する予定であること、の諸事実が判つた。

(8)  ちなみに、その後本件土地建物がどのように利用されているかについては証拠が乏しいので、十分明確ではないが、本件建物のうち地下一階、地上一、二階はベル協会の所有として保存登記され、地上三階ないし六階は各階とも一〇個(合計四〇個)の専有部分として表示登記され、昭和四〇年一二月二二日現在七名のものが各一個の専有部分につき所有権保存登記をしていること、また、本件土地については、昭和四〇年一二月一日設定契約(設定者ベル協会)を原因として丸紅飯田のために地上権設定登記がなされた後昭和四三年五月一三日までの間に丸紅飯田は小林保治ほか一二名のものに自己が取得した地上権の持分を譲渡したことが認められるので、これらの事実と前項認定の事実とを総合して考えると、現在では相当多数の者が丸紅飯田から三階ないし六階の区分所有にかかる専有部分の所有権を譲受けてこれに居住しているものと推認できる。

(三)  転売の事実を知つた後の国の措置

(1)  関東財務局第三課では、前記(二)、(7) の事実調査にあたつて上司の指示を受け、係員が本件土地の登記簿を調査し、当時管財一係長であつた大山多吉がベル協会の山下理事長を訪ねて実情を聞いたり、建築工事の始まつたばかりの本件土地の現場をみたり、さらに楽石社の伊沢八弥に対しても事情の説明を求めたりするなど情況把握のための資料収集に努めた。楽石社、ベル協会では、本件土地の譲渡の事実を秘匿する形で国との交渉を進めていたこともあつてか、右両者間で取り交された契約書、覚書、協定書(乙第六ないし第九号証)等の提出方についてはなかなか協力が得られない状態であつたが、それでも前記(二)、(7) の事実のほか、山下理事長から、経済的に恵まれない社会福祉法人としては、経費捻出のため、マンシヨン建設もやむを得なかつた旨の説明を受けた。これら事実調査の過程では、関東財務局としては、楽石社、ベル協会いずれに対しても文書による抗議、口頭による警告或は工事差止等の措置はとらないままであつた。

(2)  ところで楽石社は、本件土地をベル協会に譲渡し、その売買代金を受領しながら、ベル協会との約束に反し、国に対する納付金を完納していなかつたので、ベル協会は、昭和三九年八月一七日にすでに、納期のきている昭和三九年度分および昭和四〇年度分(納期昭和四〇年一月一九日最終回)を併わせて、楽石社名義で関東財務局に支払つた。そこで同局は、同月二一日に、右売払代金の担保のため本件土地に設定してあつた抵当権設定登記の抹消登記を同局長名で東京法務局渋谷出張所に対し嘱託し、同日右抵当権設定登記が抹消された。

(3)  関東財務局は、右(1) の事実調査後、その対策として、本件土地上に福祉施設ばかりでなくマンシヨンが建てられる点を考えると、福祉施設だけの場合のように時価の二分の一を楽石社から支払いを受けるということではおさまらないのではないか、或は、楽石社との間の第一売買契約を解除するとなると、本件土地について原状回復という問題が生じてくるが、すでにベル協会が楽石社から転売を受けているので、物件が国に戻るかどうか疑問ではないか、などいろいろの点を考慮していたが、問題が公になつただけに慎重を期していたところ、昭和四〇年三月三〇日の第四八国会衆議院決算委員会で、勝沢芳雄委員からこの問題について大蔵省のとる方針如何が質された。これに対し国有財産局(もとの管財局)国有財産第二課長村田博が答弁にあたり、楽石社から第一売買契約に定める違約金五五四万三、五五〇円のほか楽石社の転売差益金三、七二三万一、〇〇〇円を徴収することで本件を収拾する考えであることを明らかにした。

(4)  さらに、その後二ケ月の間に関東財務局で方策検討した結果、楽石社との間の第一売買契約の契約条項第三四条(その内容については請求原因一記載のとおり)により楽石社に対し特別違約金を請求することに方針を決め、昭和四〇年六月三〇日同局長の決裁を得て、同年八月二六日頃楽石社到達の書面で、同年九月一五日までに特別違約金九、〇三〇万五、八五八円を支払うよう催告した。

なお特別違約金の額は、請求原因一(3) 記載の計算方法により、昭和三九年五月(この時点は請求原因一の(3) に示されている転売時と特別違約金の徴収決定時との中間時点である)現在の時価である九、四五七万〇、二〇〇円から第一売買契約の売買代金を控除した八、四七六万二、三〇八円と五五四万三、五五〇円との合算額である。

三  当裁判所の判断

(一)  結論的所見

以上の認定事実(当事者間に争いのない事実を含む)によれば、そして後記のように被告の各抗弁、反ばくがいずれも理由のないことを併せ考えると、原告国が被告楽石社の用途違反を理由として契約に定められた特別違約金を前認定の計算のもとに請求することは理由があり、それは被告主張のように決して違法でも不当でもないものと考えられる。そこでつぎに、「被告の主張」について個別的に当裁判所の判断を示すこととする。

(二)  被告の各主張に対する判断

(1)  楽石社からベル協会への譲渡につき原告が承認を与えたとの主張について

本件についてみると、ベル協会の山下理事長が、本件土地の使用を認めてほしいと関東財務局に申し入れ、これを受けて同局がその方法を検討していた経過は、前記二の(二)(2) (3) に認定したとおりであるが、さらに進んで牧野財務局長が山下理事長に対し、本件土地の指定用途の変更申請につき内諾を与えたとの点については、これを認めるに足りる証拠はない。

もつとも、前記二、(二)、(3) 認定事実のとおり関東財務局が、同局管財次長の段階で転売を認めるという方法で解決しようとし、同局内のこの態度が、ベル協会に洩れ伝わつたことも、成立につき争いのない丙第五号証によつて認められるが、同局が楽石社とベル協会との間の具体的な第二売買契約を昭和三九年四月まで知らなかつたこと(前記二、(二)、(6) 認定事実)、転売を認めた場合の契約内容となる本件土地の時価評価がまだ終つていなかつたこと(同二、(二)、(5) 認定事実)などの事実に照らせば、右は、同局の対外的な正式の態度ではなく、したがつて第二売買契約を認めたものとみることはできない。

更に、被告は、山下理事長が白石管財局長と交渉した際、同局長が、山下理事長に対し本件土地を直接楽石社から譲り受けた方がよいと示唆し、その売買代金の額についても相談に応じた、と主張し、ベル協会代表者山下春江はこれに符合する供述をしているけれども、右供述は、弁論の全趣旨と証人白石正雄の証言に照らして信用できず、その真相は、前記二の(二)(1) (2) に認定したとおりである。

(2)  楽石社からベル協会への譲渡につき、原告の黙示の承認があつたとの主張について

被告は、関東財務局が、楽石社からベル協会へ本件土地が譲渡されたことを知つたのちも、昭和四〇年三月までとりたてて抗議らしい態度を示さなかつたから、暗黙の間にベル協会への譲渡を承認したものとみるべきであるとする。しかしながら、関東財務局が第二売買契約の成立を具体的に知つたのは昭和三九年四月頃であり、その後の調査により、ベル協会が本件土地に三階から六階までが分譲マンシヨンとなつている本件建物を建てたことを知つたものであり、前認定のように、その後、昭和四〇年八月二六日到達の書面で楽石社に対し特別違約金の支払を請求したものである。したがつて楽石社に対する処分の決定が幾分後れたのは事実であるが、その故に黙示の承認があつたとみることはできない。

また、被告は黙示の承認の根拠の一つとして、国が本件土地についての抵当権設定登記の抹消登記の嘱託をしたことを主張しているが、この点の事情は前記二、(三)、(2) に認定したとおりであり、右事実によれば、右は代金完納に伴う事務手続として当然のことであり、これを目して黙示の承認の根拠とすることは背理である。

さらに被告は、ベル協会が本件建物を建築するにつき厚生省の承認を得、国から三、〇〇〇万円の補助金が出ることになつたと主張するが、この点の経緯は前記二の(二)(6) でみたとおりである。右事実によれば、一応厚生大臣がベル協会に本件土地上に本件建物を建築することを認めたようにも受けとれるが、もともと、厚生大臣には本件土地の用途制限を緩和ないしは撤廃する権限はないのであるから、厚生大臣による補助金交付の事実をもつて原告たる国が第二売買契約を承認したものとみることは困難である。

(3)  ベル協会への本件土地の譲渡が国と楽石社間の売買契約の趣旨に実質的には違反しないとの主張について

なるほど、ベル協会が聾唖者の機能障害の治療回復を目的として設立された社会福祉法人であり、同協会が楽石社に代つて本件土地を使用できるように配慮方を求めた同協会の山下理事長の働きかけに対し、国の担当部局がかなりの反応を示し、内部的に、その要望の線に沿つて検討準備を重ねたことは前認定のとおりである(二の(一)(3) 、二の(二)(1) ないし(5) 参照)。しかしながら、山下理事長は、国と交渉するに当り、本件土地の大半についてベル協会が既に楽石社から所有権の譲渡をうけていたことを秘匿していたものであり、その残部について所有権を取得するや、ベル協会は福祉事業遂行のための資金捻出のためとはいえ、本件土地上に三階以上六階までを分譲マンシヨンとする本件建物を建て、福祉事業となんら関係のない多数の者(マンシヨン買受人)を本件土地上に居住させるに至つた(二の(二)(7) (8) 参照)ことを考え合わせると、楽石社のなした本件土地の転売は、国から払下げを受けた際に定められた前記の用途指定の趣旨に反したことは明らかである。したがつて、被告の「用途指定の趣旨に反しない」という主張は理由がない。

(4)  本件特別違約金の請求が、著しく信義則違反ないし権利の濫用であるとの主張について

(イ) 楽石社が本件土地を取得するに至つた経緯、国が楽石社に対し特別違約金を請求するに至つた経緯は、前記二の(一)(1) および同二の(三)(1) ないし(4) に認定したとおりである。

右事実によれば、確かに、本件土地が楽石社の代表者らにとつて縁りのある土地であり、楽石社への売払もそのことが考慮されたであろうことはわかるが、しかし、このことからして、本件土地の払下をもつて民法第九五八条の三による特別縁故者に対する分与と同じように取扱わねばならぬ理由はない。本件においては、楽石社は、社会福祉事業施設の用に供するということで、国有財産特別措置法第三条の適用をうけ、時価の約二分の一で本件土地を取得しながら、約三年間右土地を放置しておき、国の担当部局から正規の承認をうけない間に、同じ社会福祉法人ではあるベル協会に、取得価格の四倍を超える価格(転売価格は後記第二の一、三に示すように合計四、二五九万三、〇〇〇円)でこれを譲渡しているのであつて、しかも、前認定のようにベル協会は分譲マンシヨンを含む本件建物を建てたのであるから、被告に対して国が契約違反を理由として、契約条項にしたがい特別違約金を請求することはあながち不当とはいえない。

(ロ) さらに被告は、本件土地の転売のことを事前に知りつつ、原告国が自ら行政監督上の注意を怠つておきながら、恣意的判断に基いて突然本件のような苛酷な特別違約金の請求をしたと主張する。しかし、楽石社とベル協会間の昭和三八年一月一八日附の本件土地の一部の売買契約書(乙第六号証)の第六条には、「本件契約は所定の手続(これは大蔵省に対する用途変更手続のことを指すことが明らかである)を終了するまでは、甲乙(楽石社とベル協会を指す)相互の紳士的秘密協定とし、第三者に披見せしめない」と規定されているように、国の担当部局にはその一部譲渡のことを秘匿して山下理事長が大蔵省の担当係官に用途指定の変更方を交渉したもので、山下理事長としても、本件土地上に三階以上をマンシヨンとする建物を建てる予定だとはおそらく係官に説明していないものと思われる。

したがつて、責められるべきは、用途指定をうけた楽石社と転買人であるベル協会であり、国の担当係官が監督を行つたなどと主張することは、本件においては筋違いであり、本件特別違約金は契約に定められた制裁条項に従つたものであるから、あながち苛酷であるという非難は当らない。ちなみに本件特別違約金のうち、金八、四七六万二、三〇八円は転売時と特別違約金の徴収決定時との中間時点である昭和三九年五月現在を基準とした本件土地の時価から楽石社が国から払下げを受けた売買代金を控除した金額であることは前認定(二の(三)(4) 参照)のとおりである。そして、東京都内の土地が毎年値上りしていることが公知の事実であることに鑑みると、国が特別違約金の徴収決定をした約一年前の時点における時価を基準として請求金額を決めたことは、結果的にはむしろ幾分かは控え目の請求になつていることを知ることができる。したがつて、被告の前記主張は理由がないし、斟酌することができない。

(ハ) さらに被告は、本件土地に用途指定のあることを知りながらその土地上に豪華マンシヨンを建てたのはベル協会であるから、責めらるべきはベル協会であり、原告に苛酷な特別違約金を請求するよりは、楽石社と国との間の売買契約を解除して、ベル協会に本件土地の明渡を求めた方がより適切な措置であると主張する。しかし、契約を解除をするか特別違約金の請求をするかの選択は原告においてなしうることが契約条項に定めてあり、当裁判所としても、上来認定事実によつても、原告が契約解除をすることなく特別違約金の請求したことが格別不相当の措置だとは考えられない。

(三)  むすび

以上の認定説示によれば、原告が被告に対し、契約違反(用途指定に対する違反)を理由として、金九、〇三〇万五、八五八円およびこれに対する催告において定めた期限の翌日である昭和四〇年九月一六日から完済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める原告の請求は、理由があるから、これを認容する。よつて、訴訟費用の負担については、民事訴訟法第八九条を、仮執行宣言については同法第一九六条をそれぞれ適用し、主文のとおり判決する。

第二昭和四〇年(ワ)第三、七〇二号事件について

一  当事者間に争いのない事実

楽石社が、ベル協会との間で、本件土地につき楽石社を売主、ベル協会を買主として、請求原因一(1) 記載のとおりの第二売買契約を締結したこと(ただし、昭和三八年一月一八日付売買の代金額の点を除く)、そして、右土地についてはベル協会のため別紙登記目録(一)、(二)記載の各登記がなされていること、また、ベル協会は、昭和四〇年三月本件土地上に本件建物を建築したこと、右建物のうち地下一階、地上一、二階の建物の区分所有権がベル協会に帰属し、同協会が本件土地を占有していることは当事者間に争いがない。

二  事件の経過

(一)  前認定事実の引用

本理由中第一の二(事件の経過)に記載した証拠ならびに認定事実をすべてここに引用する。

(二)  昭和三八年一月一八日付売買契約の代金額

前掲甲第二号証、乙第六、七号証、成立に争いない丙第一号証の一、証人伊沢八弥の証言およびベル協会代表者山下春江本人尋問の結果によれば、右契約当初、本件土地代金を坪当り一二万円(代金合計三、一八九万六、〇〇〇円)として取引したが、その後ベル協会側の渡会恍が楽石社の伊沢八弥と減額の交渉をした結果、昭和三八年一月二九日、坪当り八万五、〇〇〇円として計算し、売買代金を二、二五九万三、〇〇〇円(二六五・八坪分)に改訂する旨の合意が成立したことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

三  争点についての判断

(一)  停止条件の存否について

楽石社は、本件第二売買契約は、国の承認があることを停止条件とするものであると主張するが、右事実を認めるに足りる証拠はない。

(二)  要素の錯誤について

原告楽石社は、楽石社がベル協会に本件土地を転売したのは、ベル協会の代表者山下理事長の言を信じ、同人の働きかけにより必らず転売につき国の許可が得られるものと信じたが故である、しかるに、現実には国の承認が得られなかつたのだから、転売の契約については要素の錯誤があり、契約は無効であると主張する。しかし、楽石社としては、国の承認が必らず得られると信じていたわけではなく、その承認を得られない場合のあることを予想し、後記(三)認定のとおり、転売契約につき解除権留保の特約を附していたし、また、二回目の残地の売買のときには、乙第八号証の覚書のなかに、「甲(ベル協会)は乙(楽石社)に対し前項の代償として二千万円を支払うと同時に大蔵省に対する乙の責任の一切を継承し、苟くも乙に対し迷惑となるべき事態を生ぜしめないように保証する」という条項(第三条)をも用意してあるのである。したがつて、楽石社としては、国の承認が得られなかつた場合には、契約で定められた右二つの方法(契約の解除権、損害補償)のうちいずれかを選ぶべきであるし、錯誤はなかつたものと考える。よつて錯誤の主張は排斥する。

(三)  解除権留保の特約について

(1)  前掲乙第七号証によれば、楽石社は、ベル協会との間で、昭和三八年一月一八日付売買契約の際、ベル協会が楽石社から買い受ける土地の使用につき国の承認が得られない場合には、右売買契約を解除することができ、楽石社は、代金をその受領のときから日歩四銭の割合による利息を付してベル協会に返す旨の合意をしたことが認められる。楽石社とベル協会は、本件土地のうち右土地を除いた残地全部について同年六月二四日売買契約を結んだが、その際取り交わした「覚書」と題する書面(乙第八号証)には明文はないが、右両者が取引に入つた経緯(前記第一、二の(一)の(5) ないし(7) および同(二)の(4) (6) 認定事実)および弁論の全趣旨に徴すると、残地の売買のときも同年一月一八日付売買のときと同じ趣旨の合意があつたものとみるのが相当である(もつとも、右覚書第一条には、それ以前に楽石社、ベル協会間で取り交わした文書を失効させる旨の記載があるが、その文脈からすれば、その失効すべき部分は代金の支払に関係する部分であることが明らかである)。

(2)  しこうして、楽石社、日本ベル協会間の本件土地の売買につき国の承認が得られなかつたことは、前記第一、二の(三)(4) および第一、三の(二)(1) (2) に認定したとおりであり、楽石社がベル協会に対し昭和四〇年四月二九日到達の書面で、右第二売買契約を解除する意思表示をしたことは、当事者間に争いがない。

右事実によれば、第二売買契約は適法に解除されたのであるから、ベル協会は楽石社に対して、原状回復義務として、右売買契約にもとづき本件土地についてなされた別紙登記目録(一)(二)記載の各登記について抹消登記手続をなす義務と本件建物を収去して本件土地を明渡す義務がある。

四  区分所有建物の一部の収去請求について

(一)  さて、右に説示したところによれば、原状回復義務として、ベル協会は本件建物を収去して本件土地を楽石社に明渡す義務がある。しかし、本件建物のうち地下一階と地上一、二階はベル協会の所有であることに争いはないが、その三階ないし六階の部分は、前説示のとおり(第一の二の(三)(8) 参照)それぞれ専有建物として多数の者が所有しているのであるから、特段の事情の認められない本件においては、ベル協会の収去義務のうち、右の三階ないし六階については、その履行が不能というべきである。したがつて、本件建物のうち三階ないし六階の収去を求める請求はその故に棄却すべきである。

(二)  しからば、ベル協会所有の地下一階、地上一、二階についてはどうかというに、その収去請求は認容すべきものと解する。この点に関して問題は二つある。その一は、建物の区分所有等に関する法律第七条(区分所有権売渡請求権を認めた規定)であり、その二は、多数人が各別に所有する多数の専有部分からなる建物(なかんずく階層的区分所有の場合)の収去請求は所有者毎に請求できるのか、それとも多数人を被告とする必要的共同訴訟なのかという問題である。結論だけを述べることとするが、前者については、売渡請求権が認められたが故に収去請求権の行使が許されないわけではないと解する。後者については、必要的共同訴訟ではなく各別の所有者に個別的に訴の提起ができるものと解する(参考、最高裁昭和四三年三月一五日民集二二巻三号六〇七頁)。しかし、本件の場合のように地下一階、地上一、二階を収去することは、同時に三階以上の部分をも収去することになるから、たとい本判決が確定してもその執行により被害をうける他の所有者の承諾またはこれらの者に対する収去の確定判決がなければ、その強制執行には着手できないものというべきである。しかしながら、右の承諾または確定判決が具備していることは、収去請求の実体的要件ではなく、また執行文附与の要件でもなく、単なる執行開始の要件に過ぎないものと解する。よつて、当裁判所は本件建物のうち、ベル協会所有部分について収去を命ずるのである。

五  同時履行の抗弁について

(1)  被告日本ベル協会は本件土地の買受代金として、楽石社に対して、契約代金額と同額である合計四、二五九万三、〇〇〇円を支払つたと主張するが、その代金受領証として提出した丙第一号証の一ないし八の各受領証の合計額は合計四、三五〇万円となり、右八通の受領証のうちのいずれか一つまたは二つを除外してみても四、二五九万三、〇〇〇円という数額にはならない。しかも、丙第一号証の五および八(受領額は各一五〇万円となつている)の成立は原告楽石社において争つている。そして成立に争いのない丙第一号証の一ないし四、六、七と証人伊沢八弥の証言によれば、楽石社が本件土地の売買代金としてベル協会から受領した金額は、合計金四、〇五〇万円であることが認められる。楽石社が成立を争う前記丙第一号証の五および八の各受領証の各名義人名下の印影が各名義人の印章によるものであることは楽石社も認めるところであるが、証人伊沢八弥の証言によれば、右受領証の筆跡は、すべて渡会恍のものであることが認められ、さらに、ベル協会代表者山下春江本人尋問の結果および弁論の全趣旨によれば、ベル協会は代金支払には、渡会を使用しており楽石社の伊沢勝麿、伊沢八弥らは、その印鑑だけを押捺した白紙の受領証を渡会に手渡して、受領証の作成を委ねていたことが推認できる。これらの事実と弁論の全趣旨とを総合すると、右二通の受領証は、楽石社に対し一五〇万円ずつ二回の代金支払がないのに渡会がなんらかの便宜上右白紙の受領証を勝手に作成したものと考えられる。

(2)  ベル協会が楽石社の国に対する本件土地買受代金債務のうち、延滞利息を含めて金三五三万一、三五一円を、楽石社に代つて国に立替払いしたことは、当事者間に争いがない。しかし、右立替払は、楽石社、ベル協会間の本件土地の売買と全く無関係であるとはいえないが、右売買契約の債務の履行としてなされたものではないから、その返還は、楽石社の建物収去土地明渡義務および登記抹消義務とは同時履行の関係に立つものということはできない。

六  むすび

以上の認定説示によれば、楽石社の本訴請求は、ベル協会に金四、〇五〇万円を支払うのと引換えに、本件建物のうち地下一階、地上一、二階の部分を収去して本件土地を明渡し、かつ別紙登記目録(一)、(二)記載の各登記の抹消登記手続を求める限度において理由があるので、これを認容し、その余は理由がないのでこれを棄却する。なお楽石社は収去明渡の請求について仮執行の宣言を求めているが、相当でないのでこれはつけない。よつて訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八九条、第九二条但書を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 伊東秀郎 寺井忠 松本昭彦)

(別紙)物件目録〈省略〉

(別紙)登記目録〈省略〉

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